いろいろなデザイナーvol.32　～ハンス・Ｊ・ウェグナー～

今回は、生涯で５００以上もの椅子のデザインを手がけた椅子の巨匠「ハンス・Ｊ・ウェグナー（１９１４年～２００７年）」をご紹介いたします。

ハンス・Ｊ・ウェグナーは１９１４年に、ドイツとデンマークの国境の町「トゥナー（デンマーク）」で生まれました。ウェグナーは１３歳の時から家具職人の下で修業を始め、この工房でデザインの楽しさに触れて行きます。そして、１９３１年、彼が１７歳の時に木工マイスターの資格を取得します。

その後も工房で修業を続けますが、２０歳の時に兵役のためコペンハーゲンに出る事になります。兵役終了後もそのままコペンハーゲンに残り、１９３６年～３８年まで工芸スクールに在籍し、家具設計を専攻します。ここで本格的な知識を得たウェグナーは、デザイナーとしての活動を開始して行きます。このスクールでは、後に公私にわたり親交を持つことになるボーエ・モーエンセンと知り合っています。

スクールを卒業後、デザイナーとしての活動を始めますが、当然最初は仕事がなく、１９４０年から４３年にかけて、アルネ・ヤコブセンの事務所に勤務します。そこで、オーフース市（デンマーク第二の都市）の市庁舎の建設プロジェクトに参加し、そこに収める家具をデザインしました。このころから徐々に名前が知られるようになったウェグナーは、ヨハネス・ハンセン社との共同作業を始めて行きます。

４３年にヤコブセンの事務所を出た後、自分の事務所を開設。翌年には、中国の明王朝時代の椅子に影響を受けた作品「チャイニーズ・チェア」が誕生します。その後も改良を重ねて作られたこの椅子ですが、最終的な完成品は、１９４９年にデザインされた彼の代表作でもある「Ｙチェア（CH24）」と言われています。この椅子は、カール・ハンセン＆サン社で生産され、ウェグナーの最も成功を収めた椅子とも言われています。また、彼のデザインした「ザ・チェア」は、ジョン・Ｆ・ケネディが大統領選で使った椅子としても有名ですよね。

このほかにも多くの名作を残し、才能あふれる多作なデザイナーとして知られるウェグナーは、優れたデザイナーに送られるルグニング賞や、大阪国際デザイン賞など多くの賞を受賞しています。また、デンマーク王立芸術アカデミーの名誉会員、英国王立美術大学からは名誉学士号が贈られています。

しかし、その華々しい活躍をしたウェグナーは、２００７年１月にこの世を去ってしまいます。
享年９２歳。

彼がデザインした作品はニューヨーク近代美術館（MoMA）や、ミュンヘンのディ・ノイエ・ザムルングなど世界中の美術館でコレクションされており、現代でもデザイン界に大きな影響を与えています。

• 2018-01-02